海上運送人X(米国会社)は、貿易等を営むY株式会社との運送契約に基づき、昭和26年10月17日横浜港出港のX傭船の船舶により鉄板300トンをYから同鉄板を買い受けた荷受人A宛運送し、同年11月6日米国ロスアンゼルス港にこれを荷場した。
同運送に当り、Yは、Xに対し
「積込に当り積荷受取書(メーツレシート)上、下記の摘要を附せられたるも、無故障船荷証券発行を御許可相成る上は、わが社は貴社に対し、その発行により生じ得べき凡ゆる責任と損害求償に対し貴社は全く責任のないことを保証する。
曲り錆無責任、
若干枚数に錆あり、
一枚は船内仲仕により微小の曲りあり、」
との記載ある補償状(判決中では保証状という語が使われているが、補償状というのが通例であるので、以下補償状と読み替える)を交付し、Xは、これと引替えに「一級市場品(Prime
commercial quality)の平炉鋼鉄圧板」とのみ記載し、運送品の外観の瑕疵を何ら記載しない無故障船荷証券を右運送品に対して発行した。
同運送品到達後間もなく、船荷証券所持人Aは陸揚地の検査の結果、引渡しを受けた鋼板の多くに皺、波型、裂目、曲り等があり、厚さは承認し難いほどにまちまちであり、鉄板の四方の端及び表面にひどい錆が現れている等、船荷証券に記載のない瑕疵のあることを理由として、Xに対し、本件船荷証券買受に要した総費用から現実に運送品を売却し得た代価を差し引いた残額の損害賠償の請求をし、Xは和解により、本件鋼板の錆の除去に要する費用として合計4884ドルをAに支払った。
Xは、本訴において、Yに対して上記補償状に基づく補償義務の履行として、上記4884ドルの邦貨換算額の支払を請求した。 |