X株式会社は石炭の採掘・販売を業とする会社である。
昭和28年8月12日、XはY株式会社に対し石炭330トンを売り渡す契約を締結した。
代金1トンあたり4100円(合計135万3000円)、品質紋珠洗粉炭で6200カロリーのものというのが約定であった。
同月25日、XはYに対して約定の引渡場所で石炭330トン(以下、「本件石炭」)を引き渡した。
引渡しにはYの従業員が立会い、約定どおりの品質を有しているとしてこれを受領した。
ところが、Yが本件石炭を転売先に納入したところ、X・Y間の契約で定められたところより品質が粗悪であることが判明し、Yは転売にあたり相当の代金減額を余儀なくされた。
YはXに対し68万8000円を支払ったが、残金の支払をしないので、Xは、残金の支払及び遅延損害金を求めて本件訴訟を提起した。
これに対しYは、本件石炭が粗悪品だったことにより、転売先へ代金減額分の得べかりし利益を喪失し、これに相当する損害を被ったとして、当該損害賠償請求権を自働債権とする相殺を主張している。
原審は、「商人間の売買において(本件当事者双方がいずれも商人であることは互に明らかに争わないところである)買主がその目的部を受け取ったときは遅延なくこれを検査し、もし瑕疵があることを発見したときは直ちに売主にその通知を発しなければその瑕疵を理由として代金の減額ないし損害賠償の請求をすることはできないものと解すべきであるが、本件売買の目的物である石炭のごときは分析により容易にその品質を検査することができるものであり、又その取引のなされた後転売等に際し他の石炭と混合されるようなこともあり得ることであるから、買主においてなすべき前記検査及び通知は目的物を受け取った後直ちにこれをなさなければならないものと解するを相当とする」として、YがXになした通知は時機を失しており、YはXに対して目的物の瑕疵を理由として損害賠償を請求することはできず、相殺の抗弁は認められないとした。
これに対し、Yは、商法526条は不特定物売買には適用がないと解すべきであるとして、上告した。 |