Aは、化粧品の製造販売等を主たる事業とするグループ企業のY1社(被告・被控訴人・控訴人・被上告人)の発行済株式総数の4、6%、Y2社の発行済株式総数の39、5%等、Y1〜Y5株式会社の株式及びY6有限会社の持分を有するオーナー経営者であったが、平成12年11月15日に死亡した。
なお、Y1〜Y5社は定款で株式の譲渡制限をしている。
上記株式及び持分は、法定相続人4名が遺産を準共有している状態にある。
法定相続人は、Aの妻X(原告・控訴人・被控訴人・上告人)、Aの実姉B、その夫C及びAの実妹Dの4名であり、Xの準共有分は4分の3である。
Xは、Yらに対し、本件株式等について株主又は社員の権利を行使すべき者にXを選定した旨を通知し、前商法293条の6又は前有限会社法44条の2の規定に基づき、以下の理由を書面に掲げて会計帳簿等の閲覧謄写を求めた。
第1に、E株式会社は、Y1社から317億余円、Y6社から99億余円、Y5社から71億余円、Y3社から7億円の無担保融資(以下、「本件貸付」という)を受けていたが、Y1社の代表取締役であるFに対し、無担保で72億余円を融資したため、E社の財務状況が悪化し、本件貸付が回収不能となるおそれが生じたので、適正な監督を行なう必要がある(理由@)。
第2に、遺産分割協議及び相続税支払のための売却に備え、本件株式等の時価を算定するために必要がある(理由A)。
第3に、平成12年度の決算期時点において、Y1社は簿価47億余円相当の、Y6社は簿価154億余円相当の美術品を所有し、グループに属するG財団に寄託しているが、かかる多額の美術品の取得は会社財産を著しく減少させ、会社・株主に回復できない損害を被らせるおそれが高いから、本件美術品の内容・数量、購入された時期・金額、購入の相手方等を調査する必要がある(理由B)。
第4に、Y6社が有するE社株式73万5000株をFに代金合計73万5000円で売却したのは不当な安値での譲渡であるから、会計処理の内容及び株式取得価格等を調査する必要がある(理由C)。
原審は、理由@〜Cのいずれも、前商法293条の第1号及び旧有限会社法46条により準用される同号所定の「株主が株主の権利の確保若しくは行使に関し調査を為す為に非ずして請求を為したるとき」(以下、「第1号所定の拒絶事由」という)に該当するとして、Xの請求を棄却した。 |