Y社株式会社は、昭和63年5月23日、新株発行を行う旨の取締役会決議を行い、同年6月15日、当該新株発行にかかる払込が行われた。
だが、この新株発行については、以下の事情が認められた。
第1に、Y社株主に対する通知が行われず、また公告もなされていない(1)。
第2に、本件取締役会開催に際して、取締役の一部に開催通知が行われておらず、その取締役は本件取締役会に出席していない(2)。
第3に、Y社においては、かねてより代表取締役Aの経営に対して一部取締役から不満が出ており、これに対して本件新株発行は、Aが自己のY社における支配権を確立するためになされている(3)。
そして第4に、新株発行にかかる払込金は、早期にその拠出者の経営する会社に貸し付けられているほか、Aを支持する従業員に支払われており、Y社の資本の充実に資するものではなかった(4)。
これに対して、Y社株主Xは新株発行無効の訴えを提起した。
第1審、原審とも、以上の事情のうち、第1、第2の手続的瑕疵をもってしては本件新株発行は無効とならないとしたが、第3、第4の瑕疵をとらえてこれを無効とした。
Y社が上告した。 |