A株式会社においては定款上株式譲渡については取締役会の承認が必要とされていた。
Xは同社の株主名簿には株主として記載されていたが、実際にはその株式はBが競売によって取得していた。
XからA社に対し株主としての地位確認請求訴訟が提起され、第1審・原審ともにX敗訴を受けてXから上告。
原審判決後、訴訟継続中に開催されたA社株主総会でCに対し特に有利な発行価額で新株の第三者割当がなされることが決議された。
上記株主総会の招集通知はXに対して行われなかったが、もしXが株主総会に出席して議決権を行使していれば、上記新株発行に要する決議は成立しなかった可能性があった。
その後Xが提起していた上記地位確認請求訴訟はXの請求を認容する上告審判決が出ている。
本件はXらがA社の取締役Yに対し、本件新株発行はYの会社支配確立を目的とした著しく不公正な方法によってなされたものであり、Xに対する本件株主総会の招集通知も欠けていたことを理由として、本件新株発行により被った損害賠償を求めたものである。
原審は、本件新株発行がされた当時、XがA社に対する関係で株主としての地位を有することの確認を求める前訴につき請求を棄却すべきものとする控訴審判決が言渡されており、Yらは、同判決の確定を待っていたのでは業務の迅速性、機動性が妨げられてA社に不測の損害を生ずることを憂慮して、本件新株発行を行ったのであって、Xに対する本件株主総会の招集の通知を欠いたままその決議に基づき本件新株発行がされたことについて、Yらに悪意又は重大な過失による職務上の義務違反があったとはいえないなどとして、Xらの請求を棄却した。
Xらは上告した。 |