X銀行は、A株式会社の所有する土地(以下、「本件各土地」)に根抵当権を有する抵当権者である。
平成8年5月、Xは上記根抵当権に基づき、本件各土地の競売を東京地方裁判所(以下、「執行裁判所」)に申立て、執行裁判所は競売開始決定した。
評価人は、執行裁判所の評価命令に基づき本件各土地の評価をなし、平成9年1月、評価額1億355万円とする評価書を執行裁判所に提出した。
平成10年2月24日、執行裁判所はXに対し、本件各土地の評価額が、引受となる留置権の被担保債権額(4億1634万余円)を下回るとの理由で、民事執行法63条1項の規定に基づく無剰余通知をした。
これに対しXが同条2項に定める手続を行なわなかったため、同年3月9日、執行裁判所は本件競売手続を取消す旨の決定ををした(原決定)。
原決定が引受となると解した留置権は、B株式会社がAに対して有する建築工事請負残代金を被担保債権とするものである。
平成2年8月、BはAとの間で、本件各土地上に鉄骨造8階建て建物を建築するという建築工事請負契約(請負代金5億9946万円)を締結し、建築工事に着手した。
ところが平成3年9月、Aが破産宣告(破産手続開始決定)を受けたため、工事は、躯体及び三方の外壁は完成、建物の前面は3階以上がサッシュ施行済み・ガラス工事未施工、2階以下がサッシュ・ガラス工事とも未施行という状態で、中止された。
上記破産宣告における請負残代金は、元本及び破産宣告時までの約定遅延損害金を合わせて、4億1634万余円であった。
Bは、本件各土地上に建築中の建物を万能板で囲い、出入り口を施錠するなどしている。
また、本件各土地はAの破産宣告により、いったん破産財団に属したが、平成7年12月、破産管財人がこれを放棄し、Aの所有に戻っている。
以上のような事実関係のもと、Xが原決定の取消を求めて抗告したのが本件である。 |