Xは、昭和58年2月、Yの経営するスーパーマーケットの屋上でペットショップを営んでいたテナントのZ(補助参加人)からインコ2羽を購入した。
ところが、このインコからオウム病クラミジアを保有しており、Xの家族がオウム病、さらにはオウム病性肺炎にかかり、家族の一人が死亡するに至った。
YとZのテナント契約では、(1)Zは、店舗の統一的営業方針等の理由からYの承諾した取扱品目(ペット)について営業するものとし、Yの承諾なしにこれを変更することができないこと、(2)Zの賃料の一部は売上額を基準とした変動賃料であり、YがZの売上金を毎日管理し、これから賃料、共益費その他の諸経費を控除してZに返還するという方法で支払われていたこと、(3)Zは、営業時間、商品物品の搬入搬出等の日常の営業行為又はその付随行為につき、Yの定める店内規則を遵守すること等が定められていた。
昭和58年当時、Yの本件店舗ではZを含めて約12のテナントが入っていた。
Y経営部分とテナントであるZとは、顧客案内用の館内表示板の表示の文字の色や、販売方式、制服や名札の有無、包装紙やレシートなどが異なっており、テナントの賃借部分の前に天井からテナント名を書いた看板が吊り下げられていた。
また、本件店舗の外部には、Yの商標を表示した大きな看板が掲げられており、テナント名は表示されていなかった。
そこでXはYに対して、前商法23条の名板貸人としての責任を主張し、損賠賠償を請求した。
第1審(横浜地判平成3・3・26)は、Zの営業がYの営業に組み込まれ、その一部となっているかのような外観を呈しているとして前商法23条を類推してYの責任を肯定した。
控訴審(東京高判平成4・3・11)では、Yにおいて、「買い物客が誤認をするのもやむを得ない外観を作出し、あるいは、Zがそのような外観を作出したのを放置、容認していたものと認められる場合で、しかも、Yに商法23条にいう商号使用の許諾と同視できる程度の帰責事由が存すると認められるとき」に前商法23条の類推は可能であるが、本件ではそのような外観はなかったとして、Yの責任は否定された。
Xは上告した。 |