Y株式会社は、金融依頼の目的をもってAに対し、約束手形用紙に、支払地・支払場所・振出地を記載した上、振出人Y株式会社常務取締役Bとして記名捺印し、会社印を押印し、金額・満期・振出年月日・受取人の各欄を空白にしたまま、これを当時のYの経理部長で監査役であったCの手を経て交付し、その際、もし金融する人が具体的に決まった場合は、空欄の部分をCにおいて記入補充し、かつ、手形金額の下には必ず同人の印鑑を押印することを約した。
CはさらにDにこの旨を告げて金融依頼のため本件手形を交付したが金融は実現せず、本件手形は振出日・満期・金額を補充されてEからX株式会社に交付され、Xが受取人欄に自己の名を補充した。
XがYに手形金を請求したところ、原審判決は、本件手形は未完成で振出されたいわゆる白地手形として効力を有するとした上、Y・A間の約定についてXが手形取得時に知っていたことの立証もEに受取人欄の補充権がないことの立証もないから、約定違反をXに対抗できないとして請求を認容した。
Yは上告した。 |