X社は昭和59年2月18日に、生花・鉢物・苗木の仲卸及び販売等を目的として設立された有限会社であり、「有限会社甲野ガーデン」という商号を登記している。
Y社は、平成8年4月15日に、生花・鉢物小売等を目的として設立された有限会社であり、その商号はX社と同一である。
Y社設立に至るまでの事情は以下の通りである。
AとBは、昭和49年に婚姻し、「甲野ガーデン」の名称で生花販売業をはじめた。
昭和59年、X社を設立してこれを会社組織とし、Bが代表取締役に、Aが取締役に就任し、Aが仕入及び経理業務を、Bが日常の販売業務を担当していた。
AとBは、Aの女性問題などをきっかけに不仲になり、平成元年8月、ついに離婚するに至った。
離婚後BはX社の代表取締役及び取締役を辞任し、代わりにAが代表取締役に就任したが、平成2年初めには、BがAの元に戻って内縁関係となり、Bは再びX社の業務に携わるようになった。
A及びBは、X社の本店所在地にあった居宅兼店舗を取り壊して、新たに居宅兼店舗となる建物(以下、「本件建物」)を建築したほか、平成3年4月にはBが再びX社の取締役に就任した。
平成4年ころ、再びAに女性問題が生じたため、BはAとの関係を清算することを決意し、平成5年4月、東京家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てるなどした。
平成7年11月、AはX社を一時休業することとし、従業員2名を解雇するとともに、得意先にも店舗をいったん閉鎖する旨を連絡した。
以来X社は一切営業活動を行なっていない。
しかしBは、A・Bの長男Cの手伝いを得ながら、従前と変わることなく本件建物において「甲野ガーデン」という名称で生花販売業を続けた。
平成8年1月、Aは本店建物を出て、他所で生活するようになった。
同年3月、X社の社員総会が開催され、Bの取締役解任決議がなされた。
Bは、Cがその代表取締役、Bが取締役に就任した。
以来、本件建物においては、それまでと同様B及びCが生花販売業に携わっている。
本件訴訟においてX社は、Y社が不正の目的をもってX社と同一の商号を使用しているなどとして、当該商号の使用の差止めを求めている。 |