Y株式会社の取締役Aは、創業以来の代表取締役で発行済株式の過半数を有するXと不仲になり、その信頼を失っていた。
そこで、専らY社の支配権を奪い取る目的をもって、昭和61年9月16日、取締役会を開催して自らを代表取締役に選任する決議を行った。
さらに、同年11月14日、当時入院中であったXに招集通知をせずに取締役会を開催し、新株発行の決議を行った。
これに基づいて発行された新株は、その全部をAが引き受け、保有している。
これに対してXは、以下のように主張して、本件新株発行につき無効の訴えを提起した。
第1に本件新株発行にかかるY社取締役会決議は、Xに対する招集通知がなされておらず不適法であり、当該瑕疵ある取締役会決議に基づく本件新株発行は無効である。
第2に、本件新株発行は、A自らがこれを全部引受け、Y社を支配できるようにする目的の下にしたものであり、著しく不公正な方法によりされたものであるから無効である、というのである。
原審は、Xの第2の主張を取り上げ、著しく不公正な方法による新株発行は特別の事情がある場合に限って無効になると解すべきところ、本件においては、新株がすべてその発行を計画したAによって引き受けられ、保有されており、取引安全のために新株発行を無効とすることを特に制限する事情はなく、Y社が小規模で閉鎖的な会社で、本件新株発行が以上の目的でされたことを併せ考えると、以上の特別の事情があり、本件新株発行は無効であるとした。
これに対して、Y社が上告した。 |