割賦販売法30条の4の法的性質

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割賦販売法30条の4の法的性質

最判平成2年2月20日(立替金請求事件)
判時1354号76頁、判夕731号91頁、金判849号3頁

<事実の概要>

X株式会社は割賦購入あっせん業者、A有限会社はその加盟店である。

昭和57年8月25日、Y1はAから呉服一式(以下、「本件商品」)を代金145万円で買い受ける旨の契約(以下、「本件売買契約」)を締結した。

本件売買契約の際、Y1は、Aを通じて、Xとの間で立替払契約(以下、「本件立替払契約」)を締結し、同日AはXから売買代金を立替払し、Y1がXに対し売買代金に取扱手数料を加えた金額(176万余円)を、同年9月から昭和60年8月にかけて分割払いする、Y1が支払を怠り20日以上の期間を定めた書面による催告を受けても履行しないときは期限の利益を失う、というものだった。

Y2は、Xに対し、本件立替払契約に基づくY1の債務につき連帯保証をした(以下、「本件連帯保証契約」)。

ところが、Aが本件商品の引渡しをしなかったため、Y1とAは、昭和57年暮れ頃本件売買契約を解除する旨の合意(以下、「本件合意解除」)をし、昭和58年5月31日、その旨を記載した商談解約書を作成した。

これには本件合意解除に伴う諸問題はAにおいて責任をもって処理する旨記載されていた。

Yらは、昭和58年4月分以降の割賦金残額141万余円の支払をせず、Xから同年8月5日到達の書面で同月27日までに支払うべき旨催告を受けたが、その履行をしなかった。

本訴においてXは、Yらに対し、本件立替払契約及び本件連帯保証契約に基づき、上記割賦金残額及び遅延損害金の支払を求めている

原審は、本件立替払契約の目的であるY1の代金債務は本件合意解除により契約締結時に遡って消滅し、XがYらに対し右履行請求をすることは信義則に反し許されないとして、Xの請求を棄却した。

Xは上告した。



<判決理由>破棄差戻し。

「購入者が割賦購入あっせん業者(以下、「あっせん業者」という。)の加盟店である販売業者から証票等を利用することなく商品を購入する際に、あっせん業者が購入者との契約及び販売業者との加盟店契約に従い販売業者に対して商品代金相当額を一括立替払し、購入者があっせん業者に対して立替金及び手数料の分割払いを約する仕組みの個品割賦購入あっせんは、法的には、別個の契約関係である購入者、あっせん業者間の立替払契約と購入者・販売業者間の売買契約を前提とするものであるから、両契約が経済的、実質的に密接な関係にあることは否定し得ないとしても、購入者が売買契約上生じている事由をもって当然にあっせん業者に対抗することはできないというべきであり、昭和59年法律第49号(以下、「改正法」という。)による改正後の割賦販売法30条の4第1項の規定は、法が、購入者保護の観点から、購入者において売買契約上生じている事由をあっせん業者に対抗し得ることを新たに認めたものにほかならない

したがって、右改正前においては、購入者と販売業者との間の売買契約が販売業者の商品引渡債務の不履行を原因として合意解除された場合であっても、購入者とあっせん業者との間の立替払契約において、かかる場合には購入者が右業者の履行請求を拒み得る旨の特別の合意があるとき、又はあっせん業者において販売業者の右不履行に至るべき事情を知り若しくは知り得べきでありながら立替払を実行したなどの右不履行の結果をあっせん業者に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り、購入者が右合意解除をもってあっせん業者の履行請求を拒むことはできないものと解するのが相当である。」

本件立替払契約及び本件売買契約は、改正法施行前に締結されたものであって、「前記改正後の割賦販売法30条の4第1項の規定は適用されないところ(改正法附則6項)、Aが、Xの加盟店として本件立替払契約の締結の衡に当り、本件合意解除の当時もXの加盟店であって、Y1との間で本件合意解除に伴う諸問題を責任をもって処理する旨約したとの前示事実があっても、それだけでは前述のような特別の合意ないし特段の事情があるときには当らないというべきである。

もっとも、記録によれば、本件立替払契約に係る契約書・・・の契約条項8(1)には、商品の瑕疵又は引渡しの遅延が購入目的を達成することができない程度に重大であり、購入者がその状況を説明した書面をあっせん業者に提出し、右状況が客観的に見て相当な場合には、購入者は瑕疵故障等を理由にあっせん業者に対する支払を拒むことができる旨規定されていることは明らかであるが、これが前示特別の合意に当るとしても、Y1において右手続を履践するなどXに対する支払を拒み得る場合に該当する事実は、なんら確定されていない。」

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