「Yは本件手形に署名し、これを任意にAに交付したことが明らかであるから本件手形の振出行為は成立してものというべきであって、たといその振出についてYが主張するように手形を詐取された事実があっても、そのような事由は悪意の手形取得者に対する人的抗弁事由となるに止まり善意の手形取得者に対しては振出人は手形上の義務を免れることできないと解すべきである。
そして本件手形の受取人Bが悪意であったことは原審でYの全然主張立証しないところであるからBは善意の取得者と認むべきであり、Bから本件手形の裏書譲渡を受けたXが善意の取得者であることは原審の確定しているところであるから、YはXに対し本件手形上の義務を負担しているものというべきである。」 |