A社団は、A家の家族とその主要な親戚を社員として同家の全財産を会社財産として大正8年に設立された合資会社であり、不動産その他の財産を保存しその運用利殖を計ることを会社の目的としていた。
昭和17年にA社の代表社員であるBが死亡し、その家督相続人Y1が新たに有限責任社員となり、A社の社員はこのY1と従来からの社員CD(いずれも無限責任社員)の3名となった。
その後昭和19年にCはA社の代表者と称して他の社員に無断でA社が所有しY1Y2らが現に居住する家屋をその代理人を通じてXに売却した。
そこで、XがY1Y2らに対して、家屋をA社から譲り受けたことを主張して、家屋の明け渡しを請求したのが本件である。
第1審はXの請求棄却。
第2審も、Cが会社財産である本件建物をXに売却することは、定款に定められた会社の目的の範囲内に属する行為でないのはもちろん、売却につき他の社員の同意も得ておらず、かつ、当時A社の事業を遂行するうえで本件建物を売却する必要はなかったのであるから、A社は本件建物を売却する権能はなく、したがって、本件建物の売却は無効であるとして、控訴を棄却した。
Xは、上告して、原審判決はA社の低感情の目的を狭く解釈しすぎており、不動産の売却もA社の目的の範囲内に含まれると解するべきであると主張した。 |