Yは、日本国内で最大の売上高を有する化粧品メーカーである株式会社資生堂(以下、「資生堂」)の製造する化粧品を専門に取り扱う販売株式会社であり、Xは、化粧品の小売販売等を業とする株式会社である。
Yは、資生堂化粧品の販売先である各小売店と同一内容の特約店契約を締結して、化粧品の供給を行なっていた。
昭和37年、X・Yは特約店契約(以下、「本件特約店契約」)を締結し、以後Xは特約店として、Yとの取引を継続してきた。
本件特約店契約には、@契約の有効期間は1年間、A当事者双方に異議がないときには更に1年間自動的に更新される、B両当事者は、契約の有効期間中でも文書による30日前の予告をもって中途解約できる旨の定めがあった(以下、「本件解約条項」)。
またXは、本件特約店契約上、資生堂化粧品の専用コーナーの設置、Yの主催する美容セミナーの受講などの義務を負い、化粧品の販売にあたり、顧客に化粧品の使用方法等を説明し、顧客からの相談に応ずること(以下、「対面販売」)が義務付けられていた。
Xは、昭和60年2月頃から、単に商品名・価格・商品コードを記載しただけのカタログを事業所等の職場に配布して、電話やファクシミリでまとめて注文を受けて配達するという方法によって化粧品を販売しており、資生堂化粧品についても同様の方法で販売していた。
この場合、商品説明は電話での問い合わせに答える程度であり、顧客と対面しての説明・相談等は全く予定されていなかった。
Yは、昭和62年末ころ、Xが上記のような販売方法をとっていることに気づき、上記カタログから資生堂化粧品を削除するようにXに申し入れた。
Xはこれに応じたが、その後Xが上記のような販売方法をとっていることに気づき、上記カタログから資生堂化粧品を削除するようにXに申し入れた。
Xはこれに応じたが、その後Xが資生堂化粧品のみを掲載したカタログを別冊として使用していることが判明した。
平成元年4月、YはXに対し、是正勧告書と題する書面によって、上記のような販売方法を是正するように勧告した。
同年9月、X・Yは合意書を作成して、Xは今後資生堂化粧品についてカタログによる販売を行なわず、本件特約店契約に適合した方法により販売することなどを取り決めた。
しかし、かかる合意書の作成にもかかわらず、Xが従来の販売方法を変更する態度を全く示さなかったので、平成2年4月、Yは、本件解約条項に基づき商品の引渡しを受けるべき地位にあることの確認及び注文済みの商品の引渡しを求めている。
第1審はXの請求を一部認容した。
原審は、本件のような特約店契約においては約定解除権の行使が全く自由であるとは解しがたく、解除権行使には、取引関係を継続し難いようなやむを得ない事由が必要であるとした上で、本件特約店契約における対面販売の義務付けには一定の合理性があり、Xの行為は債務不履行にあたりかつ決して軽微なものとはいえないとして、Yの本件解約を有効なものと判断し、Xの請求を棄却した。
Xは、本件特約店契約における対面販売の義務付けは実質的に値引き販売を防止する目的でなされているものであり、独占禁止法19条が禁止する不公正な取引方法のうち、再販売価格の拘束(一般指定12項)及び拘束条件付取引(同13項)に該当するとして、上告した。 |