本件は、A銀行の株主であるXらが、同行の行員Bが、昭和59年から平成7年までの間、同行に無断かつ簿外で米国財務省証券の取引を行って損失を出し、この損失を隠蔽するために顧客、A銀行所有の財務省証券を無断かつ簿外で売却して、A銀行に約11億ドルの損害を与えたことについて、@当時代表取締役及びニューヨーク支店長の地位にあった取締役に関しては、行員による不正行為を防止するとともに、損失の拡大を最小限にとどめるための内部統制システムを構築すべき善管注意義務・忠実義務があったのにこれを怠ったことを理由として、Aその余の取締役及び監査役に関しては、代表取締役らが内部統制システムを構築しているか監視する善管注意義務・忠実義務があったのにこれを怠ったことを理由として、損害賠償を求めた。
(乙事件)A銀行が、ニューヨーク支店において本件無断取引等により約11億ドルの損害が発生したことを米国当局に隠蔽していたなどとして、米国において刑事訴追を受け、そのうち一部の訴因について有罪の答弁を行って、罰金を支払ったことについて、@当時代表取締役及びニューヨーク支店長の地位にあった取締役に関しては、内部統制システム構築義務違反、米国における法令を遵守する義務の違反を理由として、Aその余の取締役及び監査役に関しては、内部統制システムの構築に関する関し義務違反、米国における法令を遵守しているかについての監視義務違反を理由として、A銀行が支払った罰金3億4000万ドル及び当該刑事事件に関し支払った弁護士報酬1000万ドルの合計3億5000万ドル等を同行に賠償するよう求めた。 |