Y組合は、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合であって、鋳造業を営む4会社を組合員としている。
Yは、事実上組合員をして商工組合中央金庫から金融を得させることのみを常務としていた。
書記Aは、Yの唯一の被用者であって、組合の取引関係、金融関係の事務、及び手形事務を担当し、理事長の記名印、印鑑等を保管していたが、取引関係なき第三者に対して、理事長名義の融通手形を独断専行して作成交付する権限は付与されていなかった。
B株式会社は、昭和28年7月17日頃、Aが無権限であるのを知りながら、融通手形の交付をAに懇請し、前記記名印、印鑑等を使用して作成されたY組合理事長名義の約束手形の交付を受けた。
当該手形の受取人Bは、これを善意無過失のX株式会社に裏書譲渡した。
Xは、主位的にYに対して手形金の請求をなすともに、予備的に民法715条により不法行為に基づく損害賠償請求を行なった。
原審は、Aの偽造につきBが悪意であることから、民法110条の適用を否定して手形金請求を認めず、また本件手形の作成交付につき、これがYの事業の執行についてなされたと見るには不十分であるとして、不法行為に基づく損害賠償請求も否定した。
Xは上告した。 |