X株式会社は、昭和56年11月18日、A株式会社との間で、本件事務機器について、いわゆるファイナンス・リース契約(以下、「本件リース契約」)を締結し、B株式会社から本件事務機器を買い受けて、同年12月1日、Aに引き渡した。
本件リース契約には、リース期間は60ヶ月、リース料は月額3万4660円とすること、Aは本件事務機器の点検・整備、修繕・修復をすべて自己の責任と負担で行なうこと、リース期間中、本件事務機器を使用しない期間又は使用できない期間があっても、理由のいかんを問わずリース料の支払義務を免れないこと、本件事務機器の引渡後は、Aは、本件事務機器が、天災地変等により、滅失又は毀損・損傷して修理・修復が不能となり、Xがその事情を認めたときは、本件リース契約は終了するが、その場合は、Aは一定の損害金を支払うこと等の約定があった。
なお上記リース料は、リース期間満了時において本件事務機器に残存価値はないものとみて、Xがリース期間中に本件事務機器の取得費その他の投下資本の全額を回収できるように算定された、いわゆるフルペイアウト方式によるものであった。
Aは、昭和58年8月30日、東京地方裁判所に会社更生手続開始の申立をし、同裁判所は、同年12月23日、会社更生手続の開始決定をし、Yが更生管財人に選任された。
Xは、同年10月分以降のリース料の支払がなかったので、昭和59年2月8日、Yに対し未払いリース料の支払を催告し、同年5月15日、本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。
Xは、未払いのリース料債権は平成14年改正前会社更生法103条1項・208条7号(現行会社更生法61条1項・4項)の規定による共益債権であるから、Xは会社更生法手続によらないで随時その請求をすることができ、また、Aはその支払を怠ったから、本件リース契約解除までの未払いリース料と遅延損害金、及び解除に基づく約定の損害金と遅延損害金の支払等を請求している。
原審(東京高判平成2・10・25民集49巻4号1097頁)は、本件リース契約において、Aが負担するリース料支払債務と対価関係にある未履行の債務をXが負担しているとは認めることができないから、本件リース契約に改正前103条1項の適用はなく、リース料債権を改正前208条7号の共益債権と認めることはできないとした。 |