タクシー業を営むY株式会社では、役員間の対立からAが平成2年改正前商法270条に基づく代表取締役代行者に選任されていた。
Y社の株主で取締役であったXの刑事事件による有罪の判決が確定したため、当時の道路運送法上、Y社は営業免許の取消を受けてもやむを得ない立場に立たされ、監督官庁から役員変更の手続を採るよう警告を受けることにもなった。
そこで、Y社の株主であるBが、前商法237条に基づき、Aに対してXの取締役からの解任の決議を目的とする臨時株主総会の招集を請求した。
請求を受けたAは臨時株主総会を招集・開催し(取締役会の決議があったかは不明)、同総会では出席株主全員の賛成をもってXの解任決議がなされた。
Xが、取締役の解任を目的とする臨時株主総会の招集は職務代行者の権限について定める平成2年改正前商法271条(前商法271条・70条の2)にいう会社の常務に属しない行為であるのに、本件臨時株主総会は裁判所の許可を得ずに招集されてたので招集手続に違法があると主張して、株主としての資格で決議取消の訴えを提起した。
1審・2審ともXの請求を認容したため、Y社が、常務に当るか否かは法令・定款によって当該行為が義務付けられているか否かを基準とすべきであり、少数株主による臨時株主総会の招集請求があれば代表取締役は原則として総会を招集しなければならないのであるから、かかる招集は会社の常務に属し、それは取締役の解任を目的とする臨時株主総会の招集であっても異なるところはないとして上告。 |