Xは株式会社を設立して代表取締役を務め、資産を有し、不動産、絵画の販売や英会話学級の経営等を行なっており、海外出張中や、ゴルフに出かけることも多く、平成元年当時は夫と離婚の調停中で、幼い子と2人で生活していた。
XはY証券会社との間で平成元年4月25日以降取引を行い、同年5月24日にはB銘柄の外貨建ワラント(新株引受権証券)の買付をしたが、その際、Y証券甲支店の担当者AはXに対し、電話でワラントにはギヤリング効果があり、値下がりの幅も大きいので紙切れ同然になる場合もありうること、ワラントには権利行使期間があることなどについて説明した。
また、AはXがB銘柄のワラント購入直後にXがY社の店頭を訪れた際、メモ用紙にグラフを書いて株価とワラントの市場価格との関係について、ワラントの理論価格、プレミアム、権利行使価額、ギヤリング効果等の説明をし、その後説明書も交付した。
この取引によりXは利益を得た。
その後、同年9月1日、AはXに対し、本件の外貨建てワラントを購入するよう電話で長時間にわたって勧誘し、Xはこれに応じて本件ワラントを購入したが、その際、Aはワラントそのものに関する格別の説明はしなかった。
本件ワラントの価格は、その後値下がりを続け、権利行使価格を下回ったまま権利行使期間を経過し、結局無価値となった。
そこで、Xは、Aがワラントについての説明義務を怠り、必ず儲かるといって勧誘したので本件ワラント購入代金分の損害を被ったと主張して、民法715条(使用者責任)に基づきY社に対して損害賠償を請求した。
第1審判決は、Xの請求を一部認容したため、XとY社の双方が控訴した。 |