A株式会社の代表取締役Yは、平成2年4月11日、新株20万株を発行し、そのうち10万株についてはY自身に、残りの10万株はYの長男に割り当てた。
当時のA社株式の時価は900円であったが、本件新株発行の発行価額は700円であった。
Xは、A社の株主であるが、以下のように主張して、Yに対し、前商法266条1項5号に基づく取締役の責任を追及する代表訴訟を提起した。
すなわち本件第三者割当による新株発行は、特に有利な発行価額によるものであるにもかかわらず、前商法280条の2第2項に基づく株主総会特別決議を経ていない。
したがって、A社は発行した20万株について、1株当り公正な発行価額との差額200円の損害を被っており、Yにはこれを賠償する責任がある、というのである。 |