ガス配管工事、プロパンガス、ガソリンなどの販売等を業とするA株式会社代表取締役Bは、昭和48年末ころYに対し、「精華住設機器 Y」の名称で商売をしたいので氏名の使用を認めて欲しい旨申し入れ、Yはこれを許諾した。
その後Bは、C銀行D支店との間で「精華住設機器 Y」名義で当座勘定契約を結んで預金口座を開設し、この口座を利用してA社の営業に関連してY名義の約束手形を振り出していた。
Bは当座勘定取引についてYの了解を得ていなかったが、Yは、当座預金残高が不足になった際Bから現金を受領して入金手続を行なうなど、Bによる取引を知りつつ黙認していた。
Xは昭和51年ころ初めてBから「精華絨設機器 Y」振出名義の約束手形の割引を依頼された。
そこでC銀行D支店に振出人の信用状態を照会したところ、いずれも決済されている旨の回答を得たため、Xはその後3回にわたって手形の割引に応じ、これらの手形はいずれも決済された。
本件手形も、BがA社の営業に関連して、前記当座預金口座を利用し、振出人を「精華住設機器 Y」、受取人をBとして振り出したものである。
そしてXは、Bの割引依頼に応じて、Y振り出しの手形と信じて本件手形を割り引いて取得し、昭和52年5月12日に支払場所において提示して支払を求めたが拒絶された。
そこでXはYに対し手形金の支払を求めたが、Yが振り出しを否認したため、Xは前商法23条の名板貸責任を主張した。
原審は前商法23条の類推適用によりXの請求を認容し、Yが上告した。 |