A株式会社はB株式会社を吸収合併し、中心事業の転換をはかるとともに株主の安定化をはかろうとした。
これに対し、A社株式の発行株式総数の約25%を保有していたCが上記合併は自己の持分比率の低下をもたらすという理由で合併反対の意思を表明した。
AC間の交渉を経て、A社はその100%出資子会社であるD株式会社に対し、C所有の株式を同人の要求する価格で買取った上、A社の関連会社にCからの買入価格より低い価格で売り渡すことを指示し、D社は上記指示に従い、Cとの間で本件株式について代金を82億円余とする売買契約を締結し、契約と同時に株券の引渡しを受け、代金全額を支払い、その後本件株式を複数のA社の関連会社に対して代金合計46億円余で売り渡した。
差損はD社が負担し、他方AB間の合併も成立した。
その後、A社の株主となったXがD社による本件株式の買取は自己株式取得を禁止した前商法210条に違反し、その結果として差損額35億円余りが生じたとして、上記買取り当時A社の取締役であったYらに対しA社への賠償を求めて株主代表訴訟を提起した。
第1審・原審ともにYら敗訴。
原審は本件株式買取が前商法の禁ずる自己株式取得であることを理由とした判示であった。
また原審ではYは本件株式買取により合併が実現したことによりA社に利益が生じており損益相殺の対象となる旨主張したが原審は否定した。
Yは上告した。 |