Yは、昭和61年3月2日から平成5年6月21日までX株式会社の代表取締役であった。
X社の発行済株式総数2万株のうち、Yは平成5年2月までに3000株を取得したが、残りの1万7000株は他の株主が保有している。
X社には取締役の報酬額を定めた定款の規定はなかったし、株主総会の決議もなされていない。
YがX社から取締役の報酬として支給を受けた額のうち、昭和61年9月分までは全株主の同意があったが、昭和61年10月分から平成3年7月分まで支給を受けた4275万円については、株主総会の決議に代わる全株主の同意がなかった。
そこで、X社が、Yが本件取締役の報酬の支給を受けたことが前商法269条に違反するなどと主張して、Yに対し全商法266条1項5ごうに基づく損害賠償の支払を求めて提訴した。
第1審判決は、Yは従前全株主の合意を得て取締役としての報酬の支給を受けており、その後の各営業年度において株主総会が開催されなかったことで報酬額が減額されたと解することはできず、従前全株主の合意のあった月額35万円の限度で報酬請求権を有するとして、請求を一部棄却した。
これに対して原審判決は、株式会社・取締役間には通常、有償である旨の黙示の特約があるから株主総会決議なくしても取締役は相当な額の報酬を請求でき、本件報酬相当額は少なくとも現実の支給額を下回らないとして、請求を全部棄却した。
X社は上告した。 |