昭和36年7月21日午後11時25分ごろ、X株式会社の所有する機船M丸と、Y1が所有しY2株式会社が賃借して使用する機船N丸とが、津軽海峡東口、恵山岬灯台から磁針方位南東微東2分の1東約3、5海里の地点で衝突した。
本件衝突は、濃霧となり展望が著しくさえぎられたのに適度の速力とせず、かつレーダーで前路に他船の映像を認め、自船と互いに接近する状況にあったのになんらの措置もとらず、依然全速力のまま進行したM丸の船長の運航に関する職務上の過失と、濃霧となり展望が著しくさえぎられているに適度の速力で進行しなかったN丸の船長の運航に関する職務上の過失によって発生したものである。
本件衝突により、M丸は現実の損害として217万1359円(内訳、修繕及び検査関係費用209万4750円、附随諸費用7万6609円)、休航損害として144万8015円、計361万9374円の損害を受け、N丸は修繕費等現実の損害として109万5960円、休航損害として273万9076円、計383万5036円の損害を受けた。
XがY1及びY2に対して損害賠償を請求した。
Xは交差責任説によるべきであり、かつY2は相殺を主張しえないとして、上記Xの損害額の賠償を請求するのに対して、Y2は単一責任説をとるべきであり、交差責任説をとるとしても民法509条の相殺禁止は本件には適用がなく、Y2は賠償額のうち対等額を相殺したと主張した。 |