「株式を共有する数人の者が株主総会において議決権を行使するに当たっては、商法203条2項の定めるところにより、右株式につき「株主の権利を行使すべき者一人」(以下「権利行使者」という。)を指定して会社に通知し、この権利行使者において議決権を行使することを要するのであるから、権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠くときには、共有者全員が議決権を共同して行使する場合を除き、会社の側から議決権の行使を認めることは許されないと解するのが相当である。
なお、共有者間において権利行使者を指定するに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができると解すべきであるが(最高裁平成・・・9年1月28日第三小法廷判決・裁判集民事181号83頁)、このことは右説示に反するものではない。
これを本件についてみると、原審が適法に確定したところによれば、(1)亡Aの有していた本件株式は、Xを含む亡Aの共同相続人が相続により準共有するに至ったが、本件株主総会に先立ち、権利行使者の指定及びY社に対する通知はされていない、(2)本件株主総会には、右共同相続人全員が出席したが、Xが本件株式につき議決権の行使に反対しており、議決権の行使について共同相続人間で意思の一致がなかった、というのである。
そうすると、本件株式については、権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠くものであるから、共同相続人全員が共同して議決権の行使を認める意向を示していたとしても、本件株式については適法な議決権の行使がなかったものと解すべきである。
したがって、本件株式について適法な議決権の行使がなく、本件株主総会決議は取消されるべきであるとした原審の判断は、その結論において是認することができる。」 |