Xは、各種靴下の輸出入・卸売等の業務を営む株式会社である。
Xは、昭和54年9月27日、Y株式会社からパンティストッキング(以下、「本件ストッキング」)11万1000デカを、代金1デカあたり500円(合計5550万円)で購入した。
本件ストッキングは倉庫業者に寄託されており、引渡しは荷渡指図書によってなされた。
Xは、本件ストッキングをA株式会社らに売却したが、その直後の昭和54年末から翌55年初めにかけて、売渡先から相次いで、つま先に穴あきがある、ゴムひも切れがある等の瑕疵があるため返品する旨の苦情を受けた。
Xが売渡先から商品を取寄せるなどして調べたところ、上記のような瑕疵のあるものが多数混在していることが確認された、そこで、Xは直ちにYにその旨の申入れをした。
Xは売渡先と交渉して、返品の要求は抑えたものの、値引き要求には応諾せざるを得なくなり、また、まだ売却していなかった品物についても、B株式会社らに規格外品として安価に売却せざるを得なかった。
本件ストッキングの最後の転売は、昭和55年3月に行なわれた。
本件訴訟は昭和58年12月に提起され、XはYに対し、Aらとの取引における値引相当額及びBらとの取引における得べかりし利益について、瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求している。
原審は第1に、商法526条にいう「目的物を受取たるとき」とは、現実に目的物を受取って検査しうる状態におくことをひつようとするのであって、本件ストッキングを検査するには個別包装を開封してから再び体裁よく入れ直すなどしなければならないため、Xによる本件ストッキングの検査は経済的・営業的には不可能であって、Xが転売先から瑕疵ある旨の通知を受けた時点で直ちにYに通知すれば本条の通知として足りる、とした第1審の判断を是認した。
第2に、商法536条によると損害賠償請求権は6ヶ月以内に行使しなければならないのに、本件訴訟の提起はこれをはるかに超える時期になされたのであるから、Xの損害賠償請求権の行使は不適法であるというYの主張に対して、同条は、商人間売買における買主の目的物検査義務及び瑕疵あるときの通知義務に関する規定であり、これを怠ったときに損害賠償請求等をし得なくなるというのであって、損害賠償請求権の不行使によるその請求権の消滅に関する規定ではないから、Yの主張はそれ自体失当であるとした。
以上の判断に基づき、原審はXの損害賠償請求を認容した。
これに対しYが上告した。 |