Y合名会社は、昭和16年以降、製糸業を営む社員6名からの委託を受けて製糸のの工程で生ずる副蚕糸の製品化を図る共同処理工場を経営していたが、昭和20年に工場が空襲を受けたため営業を停止した。
その後Y社社員のうちAら3名は昭和25年B株式会社を設立し、B社の名においてY社のほとんど唯一の財産である土地建物を使用して、従前のY社と同様の業務を開始している。
Y社のその余の3名の社員C、D、E(Xの先代)は、すでに製糸業を廃業していたことから、B社の設立には参画せず、また、B社がY社の所有不動産を使用することについても承諾を与えていなかった。
Y社は、B社から支払われる賃料名下の金員を唯一の営業収入としているが、その金額は著しく低額であり、その大部分は公租公課及びY社の経営の実権を握るAの役員報酬の支払に充てられている。
このようにY社は社員間に深刻な利害対立が生じていたところ、C及びDの承継人であるFは、昭和49年、Y社を退社する意思表示をした上、Y社に対し持分払戻しを求めて訴えを提起し、現在も係属中である。
登記上の代表社員であったCの退社により、Y社は代表社員を欠くにいたったが、Y社の定款によれば、代表社員は総社員の同意をもって選任されることになっているため、後任の代表社員は未だ選任することができない状況である。
このような事情のもとで、Xは旧商法112条1項に基づきY社の解散を請求している。
原審は、Xの請求を認容したため、Y社は上告した。 |