Xは、Y株式会社の発行済み株式総数8000株のうち4350株を有する株主であり、かつY社の代表取締役であった。
Xは、昭和52年9月ころ、持病が悪化してきたので、Y社の業務から退き療養に専念することになり、同年9月21日、Y社取締役Aとの間で、全持株をAに譲渡する売買契約を締結すると同時に、XがY社の代表取締役を辞任し、Aが後任の代表取締役に就任すべきことを取り決めた。
そして、上記趣旨に副って、Xの代表取締役辞任届が作成され、Aを後任の代表取締役に選任する決議がなされた旨の取締役会議事録が作成された。
その後、Aは同年10月31日開催の臨時株主総会において、経営陣の一新を図り、Xとその妻Bを取締役から解任し、新たにC・Dを取締役に選任した。
そこでXは、主位的請求として、臨時株主総会における取締役の解任・選任決議が無効であることの確認を求め、予備的請求として上記決議の取消を求めた。
第1審判決は、Xの請求を棄却した。
控訴審においてXは、Y社がXを解任したことに正当な事由はないから、前商法257条1項但書により、損害賠償として役員報酬相当額の支払を求める旨を予備的請求に追加した。
控訴審判決は、上記事実によると、Y社がXを解任したのは会社運営上しごく当然のことであってなんら非難すべき事由は存在しないとして、損害賠償の請求を斥け、控訴を棄却した。
Xは上告した。 |