XはYより昭和30年9月27日を満期とする約束手形を拒絶証書作成義務免除の上で裏書を受けてその所持人となり、満期に支払場所に呈示したが、支払を拒絶された。
これによりXのYに対する遡及権は保全された。
その後、本件手形は受取人兼第一裏書人であるAに関する詐欺等の刑事事件の証拠物としてXより任意提出され、秋田地方検察庁において保管されていたが、同年12月25日に発生した庁舎の火災のため焼失してしまった。
XはYに対する手形債権の時効完成前である昭和31年8月2日に手形を所持しないままとりあえず手形金の支払を求める本訴を提起し、その一方、本訴の第1審口頭弁論終結前である昭和32年11月30日に本件手形につき除権判決を得て所持人たる資格を回復した。
Xの請求に対し、Yは消滅時効の完成を主張して争った。
第1審は訴え提起による時効の中断を認め、Xの請求を認容したが、控訴審は次のように判示して第1審判決を取消し、Xの請求を棄却した。
「手形はいわゆる有価証券であって、その権利を行使するについては手形の所持(占有)を伴うことを要し、手形の所持を喪失した者は、除権判決をうけない限り手形上の権利を行使することができないから、かかる者の訴訟提起は(時効期間満了までに除権判決をうけない限り)手形上の権利の時効を中断する由ないといわなければならない。」
Xは上告した。 |