本件店舗の所有者であるXは、Y株式会社との間で、昭和36年2月に、5年間の本件店舗賃貸借契約を締結した。
Y社は電気器具類販売業を営んでいたが、株式会社とはいっても税金対策上会社組織にしたにすぎず、実質的にはその代表取締役Aの個人企業であり、Xとしては、電気屋が会社組織か個人企業か明確に認識せずに、要するにAと契約したものであった。
昭和41年初頭、XがAに対して本件店舗を明渡すよう申し入れたところ、Aは同年8月19日までに明渡す旨の念書を差し入れた。
しかし、この期日を過ぎても明渡さなかったため、XはAを被告として建物明渡請求訴訟を提起した。
この訴訟継続中、裁判所の勧告によりX・A間で、本件店舗を明渡す等の和解が成立した。
しかし、Aがこの和解成立後に、和解の当事者はAであり、Y社が使用している部分は明渡さないと主張したため、XはY社を被告として本件建物の明渡等を求めて本件訴訟を提起した。
第1審・第2審ともXが勝訴した。
Y社は、AとY社とは一見して異なる名称であり、本件和解はY社を除外してXとA個人との間に成立したものであり、原判決はAとY社を混同していると主張して、上告した。 |