A株式会社の100%子会社であるB株式会社のさらに100%子会社であるC株式会社は、昭和56年、ニューヨーク証券取引所の会員となった。
ニューヨーク証券取引所は、平成2年8月8日、C社が米国証券取引委員会規則によって維持すべきとされる自己資本金額を維持せず、また不正確な定期報告書をニューヨーク証券取引所に提出したとして、同規則違反を理由にC社に対して18万米ドルの課徴金を課し、C社は同額を納付した。
さらに平成7年10月25日、ニューヨーク証券取引所は、同様の違反行為についてC社に対して100万米ドルの課徴金を課し、C社は同額を納付した。
A社の株主であるXらは、100%孫会社であるC社の損失はそのままA社の損失となるとして、A社の取締役であるYらに対して株主代表訴訟を提起した。
その理由として、Xらは、@A社にはC社がニューヨーク証券取引所に提出する定期報告書について提出前にYらの承認を取り付けなければならないとの内規が存在していたところ、Yらが証券取引委員会規則に違反した内容の定期報告書の提出に承認を与えたこと及び課徴金の支払を承認したことは、取締役の注意義務違反に当る、A仮にC社の経営をA社に報告すべき内規がなかったとしても、C社の営業規模から行っても、また、A社に及ぼす影響の大きさからいっても、A社取締役にはC社の経営を監視するためのA社の内規を制定すべき義務があったのであり、Yらはその義務の履行を怠ったと主張している。 |