倉庫営業者であるY株式会社はA株式会社から物品(茶箱60箱)の寄託を受け、Aの請求により倉庫証券2通を発行した。
Xはこれらの倉荷証券をいずれも裏書を受けて取得した。
本件茶箱は本函で、蓋と本体との境目にはかすがい釘が数本打ち付けられ、その上は製茶業者のみが用いる茶箱専用の封印紙で密封されていた。
また、茶箱には、「品名熊切園、正味115貫5百、本数15個口、静岡県稲葉村堀之内稲葉農協協同組合、増本製茶株式会社御店入」などと記載した紙片が貼付されていた。
倉荷証券には「木函入緑茶30個、昭和32年産」などと記載されていたが、Xの申出により茶箱の中身を検査したところ、中身は熊茶や茶袋であり、証券の記載とは全く異なるものであることが判明した。
本件倉荷証券には、内容検査不適当の受寄物については、種類、品質及び数量を記載してもYは責任を負わない旨の約款があった。
Xは、証券に表示された物品の価額と実際の受寄物の価額の差額187万5625円の損害を受けたとして、Yに対し証券に表示された受寄物の返還債務の不履行による損害賠償請求をなし、また、予備的請求として、倉荷証券の発行に当り受寄物と証券の表示を一致させる注意義務違反による不法行為に基づく損害賠償請求をなした。
原審判決は、まず、倉庫営業者は証券記載の寄託品と実際の寄託品が異なる場合でも証券所持人に対して証券記載通りの寄託品を引き渡す義務を負うとし、次に免責約款につき、短時間に多数の多種多様の貨物を受取り倉荷証券を作成する倉庫営業者に対し、その責任においていちいち正確な検査を要求することは実情に適せず、かつ困難を強いるものであるとして、上記免責約款は有効であるとした。
その上で、内容検査が容易でなく、または内容検査により品質又は価格に影響を及ぼすことが一般取引通念に照らして明らかな場合に限り、倉庫営業者は免責約款により文言責任を免れることができるとし、本件の茶箱入り緑茶はその荷造り及び品物の種類からみて一般の取引通念上内容を検査することが不適当なものであり、内容検査不適当なものに当るとして、Xの請求を否定した。
また、予備的請求についても、注意義務の懈怠は認められないとしてXの請求を認めなかった。
Xは上告した。 |