株式会社Aの株主Xは、A社が関税法・外為法所定の各手続を経ずにミサイルや戦闘機の部品を不正に売却・輸出し、罰金・制裁金の支払及び売上高の減少・棚卸資産の廃棄等の損害を被ったとして、取締役Y1〜Y3の善管注意義務・忠実義務違反を主張し、株主代表訴訟を提起した。
A社は、昭和61年9月までの間戦闘機部品甲を、平成元年4月までの間修理済みミサイル部品乙を輸出した(乙子商品は昭和61年い不正輸入)。
Y1は、昭和61年6月にA社の代表取締役社長、翌年6月には代表取締役社長に就任し、同年9月に不正取引の報告を受けた。
Y2は昭和60年6月A社の取締役となった後、昭和61年11月に下請企業で偶然に乙の修理を現認して12月ころ不正取引を知った。
Y3は当初から甲及び乙の不正取引に関与しており、昭和61年6月に取締役に就任した。
米司法省は、平成3年に甲輸出を理由としてA社を刑事訴追し、A社は司法取引を行って24億円余を支払い、ライセンス供与停止処分を受けた。
A社はまた、通産大臣の許可を得ないでした甲・乙の不正輸出全体を理由として、通産省から全製品の輸出禁止処分を受けた。
これらに伴いA社は特別損失を計上した。
本件本案前の争点は、代表訴訟前の訴提起の請求における原因事実の特定性であり、本案争点は甲輸出を含めた取締役就任時点以降の法令違背行為に関する監視・監督責任の有無、甲輸出を理由の一部として生じた我が国行政処分等による損害とYらの関与の因果関係、及び責任額であった。
本案前の争点、米司法省の処分による損害およびY3の責任に関する判示は省略する。 |