Y株式会社は、鉄鋼材・鉄鋼2次製品の売買等を営む商業部門、及び、港湾運送・回漕陸運荷役等の事業を営む運輸部門からなる会社であった。
Xは、昭和36年5月11日、Y社の運輸部門に雇用されたが、同年7月29日、体格等が作業員として適当でないことを理由として解雇の意思表示がなされた(第1の解雇)。
Xは、かかる解雇を無効としてY社の従業員としての仮の地位を定めることを求める仮処分を申請し、原判決(神戸地裁姫路支判昭和36・12・13労民集12巻6号1055頁)は、上記の解雇は、Xが共産党員ないしその同調者であることを理由とするものであるから、労働基準法第3条に反し無効であり、XはY社の従業員たる仮の地位を有すると判示した。
ところでY社は、昭和34年の港湾運送事業法改正により港湾運送事業が登録制から免許制とされたことに伴い、経営の都合上、運輸部門を分離独立することとし、同部門に関する営業設備資材得意先などの営業組織一切を新たに設立する会社(A株式会社)に譲渡するとともに、同部門の従業員は現職現給のまま新会社に承継させることとした。
Y社の上記の計画は昭和36年1月16日の臨時総会で承認され、昭和37年1月25日頃、労働組合はこれを了承し、従業員も異議なくこれに同意した。
そこでY社は運輸部に関する営業を新会社に譲渡すると共に従業員との間の雇用関係を同年1月31日かぎり終了し、翌2月1日付けで新会社に引き継いだ。
Y社は、Xに対しては、原仮処分判決に基づく取扱をなしてきたが、運輸部の廃止に伴う上記の取扱については通知をしなかった結果、Xからは何の申出もなく、Y社はXに対し、運輸部が廃止されたことを理由に、昭和37年3月27日付書面をもって解雇の意思表示をなし(第2の解雇)、Xが予告手当の受領に応じなかったので、これを供託した。
Xは、Xの職場がなくなったことを理由とする第2の解雇は、第1の解雇の目的を達成するための一方法たるに過ぎず、Xの思想信条を理由としてXに不利益な別異な取扱をなすものであり、無効というべきであると主張している。
本判決は、原判決同様、第1の解雇はXの思想信条を決定的理由としてなしたものであって労働基準法第3条に違背し無効であるとした上で、第2の解雇について以下のように判示した。 |