Y株式会社は事業資金の不足を、Y社代表取締役Aが代表取締役を兼ねているX株式会社からの借入によって補うことにし、昭和35年3月10日、その協議のために取締役会を開催したが(以下、「本件取締役会」)、Y社の当時の取締役6名のうちB及びCに招集通知をせず、同人らは出席しなかった。
この取締役会において出席した4名の取締役の協議により、事業資金の不足を補うためにX社から3000万円の資金を借り入れること、その借入申込、時期、支払方法及びそのための手形振出等に関し代表取締役Aに一任するという内容の決議をした。
Aは、この決議に基づき、Y社の必要の都度X社から資金を借入れ、その都度担保のためにX社に約束手形を振り出していた。
本件の約束手形2通はいずれもX社からY社に対する前記貸金の一部の担保として振り出された手形の書替手形として振り出されたものである。
本件手形の受取人であるX社は、満期後、手形金の支払を求めて本訴を提起した。
これに対しY社は、本件手形振り出しの当時、Y社の代表取締役であったAはX社の代表取締役を兼ねていたから、本件手形はその振出につきY社の取締役会の承認を必要とすべきところ、その承認がなく無効であるなどと主張した。
第1審判決は、本件手形の振出及びその原因関係である金銭貸借について、Y社の取締役6名のうち4名の会合による承認の決議があったが、会合においてはB及びCに対する招集通知がなく、同人らが出席しなかったから、この取締役会は手続に瑕疵があったところ、不出席の2名の取締役に適法な招集通知がなされたものと認められるとして、X社の請求を認容した。
Y社は控訴した。
控訴審判決は、本件取締役会の開催については、取締役の1人であるBに対し招集通知をせず、B及びCが出席しないまま決議がされたことは、Y社の自認するところであり、本件取締役会における承認決議は、その招集手続が前商法259条の2に違反し、無効であるとして、Y社の借入契約及び本件約束手形振出行為は全て無効であると判示した。
X社は上告した。 |