A社は電気事業を主要な事業とする株式会社である。
昭和64年1月、A社が設置する原子力発電所の原子力発電機(以下「本件原子力発電機」)はその再循環ポンプに破損を生じ、運転停止に至る事故を起した。(以下「本件事故」)。
その後A社は修理等の措置を施し、監督官庁等による調査・検査・許可等の法定の手続を経た上で、平成2年12月に本件原子力発電機の運転を再開した。
A社の株主であるXが、A社の代表取締役であるYに対し、Yが従業員に対して本件原子力発電機の運転の継続を命じるのは法令違反であり、これによってA社に回復すべからざる損害を生じるおそれがあると主張して、前商法272条による違法行為の差止を求めて提訴。
原審敗訴を受け、Xが控訴。
Xが主張する法令違反の内容は以下の2つである。
@本件原子力発電機は電気事業法39条1項に基づく通産省令(当時)の定める技術基準に適合しないため、本件原子力発電機の運転の継続を命じることは電気事業法39条1項に違反する。
AYには本件原子力発電機の安全上の欠陥について対策を講ずる義務又はその調査をする義務があり、それらを怠って本件原子力発電機の運転の継続を命じることは代表取締役の善管注意義務又は忠実義務に違反する。 |