Yは、昭和24年9月末頃、A証券会社の代表取締役Bから、同社が大阪財務局から資産検査を受ける場合に備え、形式上同社の不足資産を補うためY振出の小切手を貸与されたく、もしこの検査に際しこの小切手を使用したときはその見返りとして直ちにAよりYに同額の小切手を振出交付する旨の懇請を受けたので、承諾し、検査の際にAが振出日を補充できるよう振出日を白地とした小切手を作成してAに交付した。
Xは、Aに対する貸付の支払確保のために約束手形を受取っていたが、昭和26年7月末にAが廃業した後、Bからこの手形と交換に本件小切手の交付を受け、Aの不動産を処分して貸付を返済するまで小切手の振出日を補充して呈示することを待って欲しいとの申入れを受けてこれを了承した。
その後Aが返済をしなかったので、昭和29年8月上旬にXは弁護士Cに取立てを依頼し、Cが8月9日を振出日として補充して11日に支払呈示をしたが、支払を拒絶された。
Xが小切手金の支払を求めて提訴。
原審判決は、Xは小切手取得にあたって小切手振出事情について善意無過失であったし、白地小切手の補充顕は5年(商法522条)の消滅時効にかかるとして請求を認容した。 |