手形所持人に有利な解釈

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手形所持人に有利な解釈

最判昭和47年2月10日(約束手形金請求事件)
民集26巻1号17頁、判時661号81頁、判夕275号208頁

<事実の概要>

合資会社Yの代表者A(無限責任社員)は振出人欄に「熊本市草葉町4−*、合資会社Y、A」と表示した約束手形を振出した。

Xを含む裏書譲渡を経て、満期にBによって支払呈示がなされたが支払拒絶されたためにXが受け戻してYに対して手形金請求訴訟を提起した

手形判決・第1審・原審ともにYに対する手形金支払義務を認めた。

これに対し、Yより本件手形の振出人はA個人であってYではないという理由に基づき上告。



<判決理由>上告棄却。

「法人の代表者が法人を代表して手形を振出す場合には、手形に法人のためにする旨を表示して代表者自ら署名しなければならないが、手形上の表示から、その手形の振出が法人のためにされたものか、代表者個人のためにされたものか判定し難い場合においても、手形の文言証券たる性質上、そのいずれであるかを手形外の証拠によって決することは許されない。

そして、手形の記載のみでは、その記載が法人のためにする旨の表示であるとも、また、代表者個人のためにする表示であるとも解しうる場合の生ずることを免れないが、このような場合には、手形取引の安全を保護するために、手形所持人は、法人及び代表者個人のいずれに対しても手形金の請求をすることができ、請求を受けた者は、その振出が真実いずれの趣旨でなされたかを知っていた直接の相手方に対しては、その旨の人的抗弁を主張しうるものと解するのが相当である。

・・・本件手形の振出人欄には、ゴム印の押捺によって、「熊本市草葉町4−*、合資会社Y、A」と表示され、「A」の名下に**(Aの苗字)と刻した印章が押捺されていて、「Y」の部分が他の部分に比較してやや大きく顕出されているというのであるが、右の表示をもっては、本件手形の振出人はYであるともA個人であるとも解釈できるものといわざるを得ない。

そして、本件手形の所持人であるXは、Yを振出人として本訴請求をしているであるから、Yが本件手形の振出人としての責任を負うものといわなければならず、これと同趣旨の原判決の判断は正当である。」

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