A株式会社は、昭和35年8月24日の取締役会において、新株1690万株を発行し、そのうち150万株については公募する旨の決議を行った。
さらに、昭和36年1月9日の取締役会において、公募分150万株につき、1株320円の発行価額、引受手数料を1株につき9円として、Y証券会社らに買取引受けさせる旨の決議を行い、同日、買取引受契約が締結された。
なお、この日におけるA社株式の東京証券取引所での引値は、1株370円であった。
Xは、A社の株主であるが、以下のように主張して、Y社らに対し、前商法280条の11に基づく通謀新株引受人の責任を追及する代表訴訟を提起した。
すなわち当該買取引受契約は、第三者であるY社らに新株引受権を与えるものであるところ、引受手数料を差し引いた実質引受価額1株311円は、時価よりも59円も低い著しく不公正な価額である、というのである。
第1審、原審とも、買取引受契約がY社らに新株引受権を与えるものであることは認めたが、本件新株の発行価額は「著しく不公正な価額」ではないとして、Xの訴えを棄却した。
Xは上告した。 |