Y有限会社は、X及びその娘であるAを中心とする同族経営がなされていた会社であるが、昭和47年3月ころから経営の行き詰まりを来した。
そのため、X、A及びその他の主要な社員による協議の結果、XとAはその持分をB夫婦(B,C)に譲渡し、Y社の経営から手を引くこととした。
昭和47年5月28日、X、A及びAの夫とB夫婦との間で持分譲渡の合意がなされ、B夫婦は、持分の譲渡を受ける代償として、Y社の債務弁済等のため金500万円を出捐(しゅつえん)し、X、Aは、Y社に対して取締役の辞任届を提出した。
さらに、上記各社員持分譲渡の承認、B、Cの取締役選任等を内容とするY社社員総会決議があったとして、B、Cの取締役就任及びBの代表取締役就任の登記がなされ、以後B夫婦が事実上Y社の経営にあたっている。
Xは、本件訴えにおいて、上記社員総会決議の不存在確認を求めているが、訴えが提起されたのは、社員持分譲渡の合意の約3年後であった。
第1審において請求が認容されたため、Y社控訴。
原審は、本件社員総会決議が会社経営の実権の移転という重大な事項にかかわるものであり、かつ、決議に関する比較的軽微な瑕疵の存否ではなく、決議の存在そのものが問題となっている以上、Xの訴え提起を権利の濫用として排斥することはできないとして控訴を棄却した。
Y社は上告した。 |