「商法267条の規定により、株主が会社のために訴をもって追及することのできる「取締役の責任」には、取締役が法令又は定款に違反した結果生じた会社に対する損害賠償責任や会社に対する資本充実責任だけでなく、不動産所有権の真正な登記名義の回復義務も含まれると解するのが相当である。
けだし、会社の取締役は選任されることによって委任の規定に従い会社に対し善管注意義務ないし忠実義務を負い、取締役の会社に対する責任を追及する訴の提起は元来、取締役の善管義務ないし忠実義務の履行請求権の主体である会社のみがなしうるところであるが、とくに、第三者である株主においてもなしうることとしたゆえんのものは、取締役間の特殊な関係から会社においてかかる訴を提起することがあまり期待できず、訴提起懈怠の可能性が少なくないことに鑑み、その結果、会社すなわち株主の利益が害されることとなるのを防止してその利益を確保することにあるところ、取締役間の特殊の関係にもとづく訴提起懈怠の可能性は、取締役が会社に対し不動産所有の真正な登記名義の回復義務を負っている場合でも異なるところはないからである。」 |