Y1〜Y4の4名は、昭和24年12月始め頃、当時好況にあった石炭販売の共同事業を始めることを計画し、それぞれ労務を提供し事業資金は他から融資を申し込んだところ、担保を提供するならこれに応じる旨の返事を得た。
Yらは、Y3を通じて、Y3と極めて親密な間柄にあったXに上記共同事業をを説明し、X所有の土地家屋(以下、「本件物件」)を融資の担保として2ヶ月間借り受けたい、2ヶ月後には融資の返済をし、担保の負担を抹消して本件物件を返還する旨申し込んだ。
XはYらの共同事業の助けになるならばと、Yらの申込を承諾した。
そこで、Y1はXから本件物件の登記済証及びXの印鑑を受け取り、X名義で本件物件を売渡担保に供して、A他1名より10万円で借り入れた。
YらはAらより融資を受けた借入金を弁済期までに弁済せず、したがって、担保の負担を抹消して本件物件をXに返還することはできなかった。
AらはXに対し、担保の実行として所有権移転登記手続を求める訴訟を提起した。
Xは第1審で敗訴し、控訴審において、Xが本件物件の所有権を保有する代わりに、Aらに17万円を支払う旨の和解が成立した。
XはYらに対し、担保の負担を抹消して本件物件を返還するという債務の不履行により損害を被ったとして、損害賠償を請求している。
第1審はYらの債務不履行を認め、Yらは17万円の損害賠償債務を負担すべきところ、「右債務はY等の前記共同事業それ自体ではないが之が準備行為にして附属的商行為と認むべき行為に基因する損害賠償債務であるから商法第511条により各自連帯して支払う義務がある」とした。
原審は、第1審の判断を是認したうえで、結局営業を開始するに至らなかったのであるから本件物件の借受はYらの商行為とはならないというY側の主張を退け、「特定の営業を開始する意思を実現したものであってこれにより商人たる資格を取得すると解すべきであるから、右準備行為も亦商人がその営業のためにする行為として商行為となる」とした。 |