Y株式会社は昭和34年12月2日の取締役会において、同会社の新株式発行につき、(1)新株式は昭和35年2月29日午後5時現在株主名簿に記載されている株主に対し、その所有株式1株につき新株2株の割合で割り当てる、(2)新株式の申込期間は同年4月25日より5月10日までとする、(3)払込期日は同年5月21日とする、(4)申込証拠金は1株につき金50円とし、払込期日に払込金に充当する旨を決議した。
Xは上記割当基準日以前の昭和35年1月28日にその有する旧株式500株をAに譲渡し、Aは同年2月16日Y社に対し株式名義書換の請求をしたが、Y社の過失により上記書換は行われず、上記基準日当時も依然としてXが500株の株主として株主名簿上記載されていた。
Y社は同年4月25日Xに1000株の新株割当の通知をなし、Xは1000株の申込をするとともに証拠金5万円の払い込みをした。
しかしY社より上記新株割当通知の撤回があり、申込証拠金の払戻もなされた。
Xより上記撤回の無効主張及び株式引渡請求をした。
第1審・原審ともにXが敗訴した。
Xは上告した。
上告理由は、以下のようなものであった。
株主に新株引受権を与えるか否かは取締役会の自由に決定しうるところであるが、一旦株主名簿上の株主に新株引受権を与えることとなった場合は、前商法280条の4の規定によって取締役会において任意勝手にこれを改廃することは許されない。
これは、株主関係の画一的処理を目的とする名義書換制度を設け、株主名簿の備置、閲覧謄写等公示主義を徹底する以上、譲受人が名義書換請求をしたか否かによって解釈を異にすることは許されない。
その請求は会社と請求人との間ではあるいは明確であるかも知れないが、譲渡人その他第三者にとっては不明なことであり公示されないところであり、かかる不明確な事由により解釈を異にすることは法律関係の明確性・画一性を害する結果となる。 |