Xは証券会社を通じて昭和23年2月末にY1名義の、同年8月初めにY2名義のA株式会社株式をそれぞれ所得した。
A社は同年7月初めの株主総会に基づき増資を行い、同年9月15日午後4時現在の株主に1株(親株)につき1、4株の割合で新株引受権を与えることとした。
Xは取得した株式につき新株引受権付与の期日までに名義書換を失念していたために、名簿上の株主であるY1・Y2が新株の引受・払込をしてこれを取得した。
XよりYらに対し、払込金額と引換えに上記増資新株の引渡請求(予備的に市場価格と払込金額との差額請求)。
第1審・原審共にXの請求棄却。
Xは上告した。
上告理由は、以下のようなものであった。
新株引受権付与の対象となる株主は、株主名簿上の株主ではなく、あくまで当事者間の株式自体の授受を基準にして決定されるべきであれば、譲渡当事者が新株の市場価格の騰落によって自己に有利な請求をすることになり(実質上の株主は価格上昇した場合にのみ新株引受権の行使・新株引渡を名簿上の株主に求め、逆に名簿上の株主は価格下落の場合に新株の引取りを実質上の株主に求める)、信義則・取引安全を害することになるとするが、親株の市場価格には相当のプレミアムが含まれている場合が常であり、価格下落の危険があれば新株の申込をしなければよいのであるから名簿上の株主である譲渡人に不測の損害を生ずるおそれはない。 |