XとY保険会社は、Xを保険契約者兼被保険者、保険金額を800万円、Xの妻Aを保険金受取人とする生命保険契約を締結した。
本件契約に適用される普通保険約款には、保険契約者は、契約者貸付制度に基づいて、解約返戻金の9割の範囲内でYから貸付を受けることができ、貸付金額は保険金もしくは解約返戻金の支払の際に元利金から差引決済される旨の定めがあった。
AはYに対し、Xに無断で契約者貸付を申し込み、貸付を受けたが、Xはこの事実を知らなかった。
貸付の後、XはAと離婚したが、その頃、Yから送付された本件貸付に関する払込通知票を受領し、AがYから契約者貸付を受けた事実を知るに至った。
そこでXは、本件訴訟を提起し、Yに対し、本件貸付契約上の債務が存在しないことの確認を求めた。
これに対するYの主張は、Aの有権代理、民法110条の表見代理の成立のほか、YがAをXの代理人と信じて契約者貸付を実行したことに関する無過失を理由に、民法478条の類推適用により本件貸付の効力がXに及ぶべきというものである。
第1審は、表見代理の成立を認め請求棄却。
原審は、表見代理の成立は否定したが、民法478条類推の主張を採用し、控訴棄却。
これに対しXが上告。 |