Y株式会社は、約束手形2通を振り出し、両者ともにBから白地式裏書がなされ、Xが保有している。
これらの手形は、Y社がBに金融を得させるために振り出した融通手形が何度も書き換えられた最終の手形である(以前の手形はY社において手形振出の権限を与えられていた専務取締役CからB、BからXに交付されていた)。
手形@は、金額・満期・振出日・受取人欄が白地のまま、Cによって作成され、Bに交付されたものだが、振出日以外については白地補充権を与えられたBが補充し、振出日についてはXが補充した。
手形Aは、受取人欄のみを白地にしてCが作成した上でXに交付され、Xが白地補充権のあるBに受取人欄を補充させた上で、白地式裏書をさせたものである。
Xは、この2通の手形の取得時において、BがY社の取締役であることを知っていたが、本件手形及び以前の手形に関してBに対する交付に関するY社の取締役会の承認がなかったことについては知らなかった。
Xが、本件手形を満期に呈示して支払を求めたが拒絶されたので、手形金の支払を求めて提訴した。
原審判決は、前商法265条は手形の作成行為とは区別された交付行為についてのみ適用され、交付行為については手形法16条2項の適用があるとした上で、手形@のBへの交付は無効だがXは善意無過失であるし、手形AについてはY社からXへ直接交付されているので、手形の記載ではなく現実の交付を基準として考えれば商法265条の適用はないとして、請求を認容した。
Y社は上告した。 |