A株式会社はB株式会社から船舶5隻の建造を請け負い、前渡金として代金の半額を2回に分割して交付を受けることとなった。
Aは、将来この請負契約の不履行があった場合Bに対して負担すべき損害賠償義務を担保するために、この代金半額相当の約束手形をBに対して振出した。
この際、Aの信用状態が芳しくなかったので、Bの求めに応じてAの役員であったY1・Y2が手形保証をした。
本件手形は、本件請負契約が不履行なく終了したときはAがBから本件手形の返還を受けることになっていた。
本件請負契約は期限に少し遅れたが全て履行された。
ところが、別の造船請負契約においてAがBに対して負担した損害賠償債務についてAが履行しなかったため、Bは本件手形をAに返還せず、X株式会社に裏書譲渡した。
X株式会社は支払期日に本件手形を支払い呈示したが、Aは会社更生法に入っており、支払を拒絶された。
手形訴訟ではXの手形金の支払を求めるY1・Y2に対する請求は認容されたが、原審判決は、手形保証の原因関係たる被保証債務が不成立ということに確定した場合には受取人は手形を所持する正当な権限を有しないから手形を振出人に返還すべきであるし、保証人への請求を認めると無用に煩雑な手続を強いるから、Y1・Y2はXに対し、Bに対する人的抗弁(権利濫用の抗弁)をもって対抗できるとし、請求を棄却した。
Xは上告した。 |