X株式会社はY株式会社と特約店契約を結んで水あめ菓子類を一手販売させるとともにY社から原材料を買い入れる継続的な取引を行ってきた。
X社の取締役Aは、昭和30年4月28日に、X社を代表して、X社が有する債権をY社に譲渡する契約を締結した。
X社は、本件債権譲渡の当時、AにはX社を代表する権限がなかったと主張して、本件債権譲渡が無効であることの確認を求めた。
X社の主張は次のとおりである。
AはかつてX社の代表取締役であったが、昭和30年1月5日に開催されたX社の取締役会においてAの代表取締役からの解任が付議された。
この取締役会には、取締役であるA・B・C・Dの4名が出席し、A・Bが解任に反対し、C・Dが解任に賛成した。
X社の主張によると、Aは解任決議については特別利害関係人に当るから、Aの反対投票は賛否の数に算入すべきではなく、Aの解任決議は賛成2、反対1で可決された。
これに対しY社は、Aは本件決議につき特別利害関係人ではなく、その結果、Aの解任は賛成1、反対2で否決され、Aは引き続き代表取締役の地位を有すると主張した。
第1審判決は、X社の請求を棄却したので、X社が控訴した。
控訴審においてY社は、次のような本案前の主張をした。
X社は、定款所定の存続期間の満了によって、昭和34年11月13日に解散し清算会社となったが、清算人としてX社を代表すべき資格のない代表取締役Cの名で控訴が申し立てられているから、不適法として却下されるべきである。
控訴審判決は、まず、前商法417条1項、258条を類推適用し、CはX社の解散と同時に清算人の権利義務を有するにいたったとしてY社の本案前の主張を斥けた。
次に、昭和30年1月5日の取締役会におけるAの解任決議について、Aは特別利害関係人に当り決議に参加し得ないから、解任決議は賛成2、反対1で可決されたとして、第1審判決を取り消し、債権譲渡が無効であることを確認した。
Y社は上告した。 |