X社は、株主数10名の株式会社である。
昭和47年の設立以来、その代表取締役はYであり、取締役はYとAを含めて6名であった。
昭和48年の最初の任期満了後も、後任者が選出されないまま、前商法258条1項及び261条3項により、それぞれの代表取締役・取締役としての権利義務を引き続いて有していた。
昭和50年6月、X社はYとの間で、本件土地建物に関する賃貸借契約を締結し、Yに敷金を交付した。
同年8月、Aは取締役会(@会議)を招集し、Yを代表取締役から解任してAを新たな代表取締役とする決議を行った。
そして、Aは、X社を代表してX・Y間の賃貸借契約を合意解約し、Yに対して本件土地建物を明渡し、敷金の返還をするよう催告したが、Yがこれに応じなかったため、AはX社を代表し、敷金返還を求めて提訴した。
Aが行った合意解約及び敷金返還の催告は、原審ではAには@会議を招集する権限がないことを理由に役員選任決議が不存在であり、Aは代表取締役とは認められないため無権代理行為と評価されている。
第1審継続中の昭和56年5月に、Aは、役員選任決議等を会議の目的と定めたX社の株主総会(A会議)を招集したが、その際、会議の目的たる事項を了知して委任状を作成しこれに基づいて選任された代理人を出席させた株主も含め、X社の株主10名全員が開催に同意し、出席した。
この会議において、Yを除いたAらを取締役に選任する旨の決議がなされ、選任された取締役により開催された取締役会(B会議)でAが代表取締役に選任された。
この後、Aが行った合意解約及び敷金返還催告が追認され、X社がYに対して追認の意思表示をした。
第1審ではX社が敗訴したが、原審では、@会議の取締役会決議を無効としつつ、A会議は全員出席株主総会として有効として、B会議における選任決議の効力を認め、Aの代表権を有効なものと判断した上で、請求を認容した。
Yは上告した。 |