株主総会不存在確認の訴えの利益

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株主総会不存在確認の訴えの利益

最判平成11年3月25日(株主総会決議不存在確認等請求事件)
民集53巻3号580頁、判時1672号136頁、判夕999号221頁

<事実の概要>

Xは、Y株式会社の株主であり、昭和59年当時は取締役であった。

同年5月12日に開催されたY社の株主総会において、取締役及び監査役を選任する本件第1株主総会の決議(第1決議)が行われた。

その後、取締役及び監査役の任期の満了時又はその中途において、その選任のため、順次、第4及び第5決議、平成元年5月28日、同3年5月31日、同5年5月30日の各決議、第8決議が行われ、取締役と監査役が選任されている。

第6及び第7決議は、商業登記簿にはこれらが行われたかのように記載されているが、実際には行なわれていない

さらに、第1審の結審直前の平成8年6月23日に第9決議が行われたが、ここでは取締役のみが選任されている。

Xは、各決議の不存在の確認を求め提訴した(第9決議の不存在確認の主張については原審で追加)。

原審では、第9決議の存在を理由に、第9決議の不存在確認請求は棄却し、その余の請求については訴えの利益なしとして訴えを却下した。

Xは上告した。



<判決理由>上告棄却。

取締役及び監査役を選任する株主総会決議が存在しないことの確認を求める訴訟の係属中に、後の株主総会決議が適法に行われ、新たに取締役等が選任されたときは、特別の事情のない限り、先の株主総会決議の不存在確認を求める訴えの利益は消滅すると解される

しかし、取締役を選任する先の株主総会の決議が存在するものとはいえない場合においては、その総会で選任されたと称する取締役によって構成される取締役会の招集決定に基づき右取締役会で選任された代表取締役が招集した後の株主総会において新たに取締役を選任する決議がされたとしても、その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り、以後の株主総会において新たに取締役を選任することはできないことになる(最高裁・・・平成2年4月17日第三小法廷判決)。

右は、後にされた決議が監査役を選任するものであっても、同様である。」

「そうすると、右のような事情の下で瑕疵が継続すると主張されている場合においては、後行決議の存否を決するためには先行決議の存否が先決問題となり、そお判断をすることが不可欠である。

先行決議と後行決議がこのような関係にある場合において、先行決議の不存在確認を求める訴えに後行決議の不存在確認を求める訴えが併合されているときは、後者について確認の利益があることはもとより、前者についても、民訴法145条1項の法意に照らし、当然に確認の利益が存するものとして、決議の存否の判断に既判力を及ぼし、紛争の根源を絶つことができるものと解すべきである。」

「原審は、第1及び第4ないし第8決議の不存在確認を求める訴えについて、これらにより選任されたとされる役員の任期が満了し、最後の第9決議で役員選任が行われたことにより、訴えの利益を失ったとして、右訴えを却下した。

しかし、第8決議中の監査役に関する部分については、その後に当該監査役の後任者が選任されたことの主張立証はないから、これに関する訴えの利益が失われたといえないことは明らかである。

また、第1、第4及び第5決議並びに第8決議中の取締役に関する部分については、・・・第9決議の先決関係に立つ事項として、訴えの利益があるものというべきである。」

ただし、「原審は、第9決議の不存在確認請求について判断するに当り、先行の第1、第4、第5及び第8決議の存否について十分な実体審理を遂げて」おり、その結果、請求を「棄却すべきものであるが、この結論は原判決よりもXに不利益になるので、上告を棄却するにとどめることとする。」

「第6及び第7決議の不存在確認を求める訴えについては、同決議は第8及び第9決議の存否を確定するについての先決関係に立つものではなく、記録によれば、商業登記簿中、第6及び第7決議があることを前提として記載された役員欄の用紙は既に閉鎖されていることが明らかであり、右決議の不存在確認を求める訴えの利益について、他に特段の主張立証はないから、原判決中、右訴えを却下した部分は正当であり、論旨は理由がない。」

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